川崎フロンターレ と ポジショナルプレー (2)
主題に入る前に -ルヴァンカップ決勝’17 雑感
川崎フロンターレファンの皆様におかれましては、ルヴァンカップの決勝での出来事、大変受け入れがたいことと存じます。
かくいう私も、1日寝込んでしまいましたが、ようやく落ち着いて振り返る気になってまいりました。
前半早々にミスから1点を取られた後、「1点くらいなら全然逆転可能だろう」と信じて見守っていました。おそらく多くの川崎ファンがそうだったはずです。
前回の対戦では5-1と快勝していただけに、どうも決定機を作れない川崎に違和感を感じながら試合は進み、
ついに点は奪えず、中途半端になったパワープレーの代償に追加点を取られ、試合終了でした。
振り返ると、セレッソは前回対戦のようにボールをつなごうとはせず、柿谷を前線に残しリトリート&カウンターに徹し…なんていう作戦を仕掛けてきました。
インタビュー記事を見ていても、どうやらセレッソは前回対戦で「まともにやりあったら負ける」と思ったとのことで、大幅な作戦変更をしてきたとのことでした。
川崎は、前半は右サイドからの攻撃から好機を作れず、後半は左サイドからも攻撃するようになったものの、中央をがっちり締められたセレッソ守備陣の隙を作れずでした。
試合後のインタビューで、攻め方についての問題というよりも、プレーの精度が問題だったという反省を口にする選手が多いところが川崎らしいところだなあと思います。
バイタルエリアをがっちり閉めてきたセレッソ守備網であっても、一瞬の隙を作りだしてショートパスで崩せただろうと考えるのだろうと思います。
確かに、以降で考察するフロンターレが良い時の攻撃が機能したら、
もしかするとセレッソ守備網を破れたかもしれないと思わせるところが川崎の面白いところだなあと思ってしまうのは、たんに川崎好きだからでしょうか。
0. “Area of Cooperation”
さて、本稿から2回にわたって、引き続き川崎フロンターレとポジショナルプレーについて考えていきたいと思います。
前稿では、川崎フロンターレの基礎となる風間サッカーを象徴するような言葉の数々は、
「ポジショナルプレー」という概念からいえば、「ボール保持者とその直接的サポートプレーヤーの動き」を具体化したものだと考察しました。
ポジショナルプレーの記事として紹介した『It’s Just a Sport』内の “Crash Course to Positional Play”では、
ボールの保持者と直接的サポートプレーヤーが関係するエリアを“Area of Mutual Help“と呼び、
それ以外の広範囲でかたどられる間接的サポートプレーヤーが位置する部分を“Area of Cooperation”と呼んでいます。
前稿は、“Area of Mutual Help“での各プレーヤーの動きに関しての考察でしたが、
本稿は、同時に“Area of Cooperation”を含めた各プレーヤーのポジショニングに関する考察になります。
個人的には、サッカーを観戦する際に、この部分に注目すると面白いと感じている要素でもあります。
なお“Crash Course to Positional Play”では、上記2つのエリアのプレーヤー間の相互作用がうまくいった場合、下記3つの状態が生み出せるとあります。
‐A. Continuous Spatial Distribution (連続してフィールドに構造的に選手が分布されている状態)
‐ B. Ball Circulation (ボールがスムーズにフィールド内を循環している状態、そのためにフリーな選手・スペースを連続的に生み出せている状態)
‐ C. Collective Spatial Awareness (選手同士が現状のポジショニング状況を把握して正しいポジションを継続して修正できている状態)
次稿では、上述の3つの状態を作り出せている時、どのようなポジショニングが意識されているのかという点を中心に議論できればと思います。
1. 縦の深さ -なぜ阿部がCFとして起用されたか
2. 横幅の取り方 -「そこにエウソン」の生まれ方
3. 中盤3選手のポジショニング -中村憲剛はなぜサイドに流れるのか